2022年 09月 07日
女性による女の子の表現は
現在放送中のリコリス・リコイルというアニメーション作品が素晴らしい。
劇場版クオリティで現状10話まで破綻なく進行しています。
この作品でとにかく目を惹くのが登場人物の可愛さです。
造形がいいのは勿論ですけど、確かな画力に裏付けられた線が醸し出す匂いというか重さというか、それはもう女性が描いているに違いないと思わされる不可侵領域の魅力が随所にあるのであります。

男性が描く女の子というのは何処かに夢物語を含めてしまうというか、現実を直視できていない造形や表情にしがみついてしまう傾向があるように思います。
イラストなんぞ描いてる男子は得てして女の子とのお付き合い経験がなかったりするものですので(偏見)イメージする女の子には現実では叶わない理想を求めてしまうのも無理からぬところではあるのです。
結果としてとてもキュートでセクシーな女の子が生まれたりするのですけど、そこには女子更衣室のような生々しさが希薄だったりするのです。
さて、今回の記事は変態成分が濃いが、まあ気にせず続けようか。
それがリコリス・リコイルに登場する女の子キャラにはそのような非現実的理想などとは無縁の生々しさが満載なのであります。
先ず驚いたのはオープニングで一瞬だけ流れる主人公の横からのショット。

設定17歳の女の子を描く時、男性はこの胴体の厚みを描こうとはしないはずだ。
と言うか、男性がこの厚みを表現しようとすればただのデブになってしまうだろう。
オープニングでは並んで歩く女の子が互いの尻を蹴るという描写があるのだけど、凄く生々しいのにエロくはないのです。
そしてエンディングにも驚きの描写が満載でして、





おわかりいただけただろうか。
部屋の窓辺の机と椅子、そこで暇を持て余す女の子が5カットの静止画(一部だけ動く)で描かれていますが、自室での油断した普段さが見事です。そして4カット目のだらしない恰好からの5カット目でしっかりお尻のボリュームを描く。
細かな描き込みのない簡素な線だけで描かれた「女の子の日常感』は見事です。
そこにいるのは特別でもなんでもない普通にそこに生きている女性ですので、プレミア感が無いからこそ『見られていいもの』じゃない際どさをこちらに投げかけてきます。
この手法は女性が戦略的に描かないと使えないと思うのです。
アニメーションは多くのアニメーターの手によって描かれるものですので、もしかしたら男性が描いているのかもしれませんが、監修は女性がしている筈です。そうでないなら納得がいきません。
そして同じくエンディングでのこのカットに口が開いてしまいました。

主人公錦木千束の横からのショットです。
制服着衣の横からのショットで胸のラインをこう入れるのですよ。
「マジか!」ですよ。
計算尽くだ、全部承知の上でやってやがる。
着衣の場合はその衣服の生地の厚さや重なりを考慮するので、バストラインは自ずと形が不明瞭になるものなんですよ。だけど、これはそこを無視している。
バストトップが分かるように角を作って、そこから下に向かうラインに曲線を使っている!

おわかりいただけただろうか。
この制服が動きやすさを最優先に作られていることは想像できるけれど、ジャージでもこのラインにはならないのだ。
バストの下側に緩やかに外に膨らんだような曲線を入れる時、そこにあるのは着衣の下に隠れている地肌でして、具の重みと質感なのであります。
そしてここでも困惑するのです。
これほどの直球勝負にも関わらず、いやらしくならないのです。
女性のシンボルでもある「おっぱい」の表現。
男性が強調しようとして線を曲げたなら背徳感が隠せないのです。
かつて私もこの線で大いに悩みまして、誰にも知られないところで女の子の胸の表現を前にのたうち回っておりました。
料飲パンフの時はバストトップから下のラインを描く勇気がなかった。
それを踏まえてこいこい祭りパンフの時は思い切って描いてみた。
一部の人たちにはそれがバレたようで、妙な笑顔を見せてくれました。
つまり意識し過ぎの背徳感が滲み出ていたのでしょう。
だけど、この錦木千束の線にはそれがない。
だから何?的な堂々たる造形の前に、私はただあんぐりするばかりなのです。
女性が描く女性というと、ちょっと前までは色気も素っ気もないような女性であることを感じさせないような表現が多かったように思うのですが、この作品は女性が女性をストレートに描くことで色々なハードルを一気に飛び越えて「見せてはいけないもの」をじゃぶじゃぶに解放してしまったように感じます。
だから見ていて背徳感は感じないけど、うっすらと罪悪感を感じるのです。
だらだらと書いてしまった。
女性が描くを強調した内容になったけど、作画監督には男性もいる。
だから感銘を受けた線の全てが女性によるものではないのだろう。
だけど、その思い込みに立ってみることで見えた感慨があったのでそれで書いてみた。
私は別に美術や絵画やイラストを学んだわけではありませんし、そういう生業に身を投じているわけでもないので、例によって例の如くの戯言であり戯言に過ぎないのですが、なんだか凄く久しぶりに絵を見てスゲーって思ったので記事にした次第であります。

スタッフの皆様、ありがとうございますです。
by matta_no_komeya
| 2022-09-07 00:19
| 自分ごと
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